東北大学の松居靖久教授などの研究グループは、滋賀医科大学と共同で、培養下で多能性幹細胞から生殖細胞を誘導する系を用いて糖質の重要性を調べた。その結果、生殖細胞の形成においては、グルコースが特定の代謝経路を介してタンパク質の糖鎖修飾の基質として働くことが重要であると突き止めた。
研究では、糖質が関わる代謝経路の生殖細胞形成での役割を培養系で調査。その結果ヘキソサミン生合成経路を介したグルコースからの N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の合成と、それを基質としたタンパク質の糖鎖修飾(O-GlcNAc化)が、培養条件下の生殖細胞形成に寄与することを見出した。
また、O-GlcNAc化を触媒する酵素(OGT)遺伝子のノックアウトマウスを解析し、胎仔(たいざい)でもO-GlcNAc化がPGC形成に必要であることが分かった。さらに妊娠マウスに糖質を含まないケトン食餌を供し、胎仔のO-GlcNAc化レベルと PGCの形成を調べたところ、統計的に有意な低下が見られた。
この際、ケトン食の給餌を継続し、胎仔の発育に伴う生殖細胞の分化を観察すると、胎仔精巣、卵巣中の生殖細胞数の減少が確認された。こうした結果は、妊娠期における糖質の摂取と適切な代謝はタンパク質のO-GlcNAc化を介して、PGC形成の制御に重要な役割を果たすことを明らかにしている。
研究グループは「さらに人でも同様なことが起こる可能性を、多世代ゲノムコフォート研究のデータから検証することを通じて、胎児の正常な生殖機能発達に最適な栄養環境やサプリメント摂取等の提案につながることが期待される」と説明した。