近畿大学の渡邉智裕特命教授らの研究グループは16日、真菌感染による急性すい炎の重症化メカニズムを明らかにしたと発表した。急性すい炎の新たな治療法につながる可能性もある。
研究グループは、真菌の感染により起こる免疫反応の中でも細胞内分子であるロイシンリッチリピートキナーゼ(LRRK2)の活性化に着目。この分子は、細菌が感染した際に活性化されるタンパク質で、パーキンソン病やクローン病などの炎症性疾患の発症に関与している。
急性すい炎モデルマウスを用いて、LRRK2の機能を高めたり、低下させたりした場合に症状がどのように変化するか検証。その結果、LRRK2の活性化によりすい炎が重症化し、逆にLRRK2の機能を低下させるとすい炎が軽症化すると分かった。
また、モデルマウスを用いて腸管内の真菌をそれぞれ除去した場合の症状を比較したところ、菌をなくした場合にのみ重症化が顕著に抑制されることが分かった。この結果から、すい臓が真菌に感染した場合、特に急性すい炎が重症化する可能性が示唆されている。
さらに、モデルマウスのすい臓では最近ではなく真菌の成分に反応して免疫反応が起こることも明らかになった。
これらの結果から、すい臓に真菌が感染した際にLRRK2が活性化され、急性すい炎が重症化することを突き止めた。
研究チームは「真菌感染を介して活性化されるLRRK2を標的とした重症急性すい炎の新たな治療法の確立が期待できる」と説明している。