広島大学の服部登教授らのグループは16日、ミシガン大学などと共に「腸内でカンジダ(Candida albicans)を増殖させたマウスでは肺線維症が悪化すること」を発見して、メカニズムについて新たな知見を蓄積したと発表した。この研究成果は肺線維症を含む難治性疾患に対して、微生物叢を標的とした治療法を開発する上で大きく貢献すると期待されている。
研究チームは抗菌薬とカンジダを飲水ボトルに混ぜて、腸内カンジダを増殖させたマウス (Candida+) は、カンジダを投与しない対照群のマウス (Candida-) と比較して、ブレオマイシン投与によって誘導される肺線維症が悪化した。
Candida+群の肺ではTh17免疫反応が高まっており、これらのマウスにIL-17Aの中和抗体を投与すると線維化が減弱したことから、この肺線維症の悪化にはTh17、IL-17Aが寄与していると考察。
この反応は2つの段階によって制御されている。まずカンジダが腸で増えるとRorγt (Rorc)というTh17の増殖に重要な役割を持つマスターレギュレーターを発現した「Th17への分化傾向を示すリンパ球」が遠隔臓器でもみられるようになった。次にブレオマイシンの刺激が加わると、刺激部位でTh17へと分化を遂げ、IL-17Aを産生する機序が考えられた。さらに、IL-17Aがこれまでに報告されている作用だけでなく、内皮間葉転換を誘導して線維化を悪化させることを初めて明らかにした。
研究チームは「今後は、マウス実験の結果が人においても応用可能かを探り、微生物そうを標的とした肺線維症の新たな治療法開発に結び付けられることが期待される」としている。