北海道大学大学院獣医学研究院の野中成晃教授らの研究グループは16日、北海道のエキノコックスの由来を遺伝学的に検証し、北海道のエキノコックスが3000キロメートル以上離れたアラスカのセントローレンス島に起源をもつ可能性を示した。エキノコックス症の防止につながる重要な知見だ。
エキノコックスは人に感染して重篤な疾患を起こす寄生虫。現在は道内に広く分布し、深刻な健康被害をもたらしているが、この寄生虫は20世紀初頭にキツネを海外から輸入した際に、海外から侵入した外来種であるとされている。だが、その説は推測に過ぎず、それを確認するための解析を行った。
研究では、国内外のエキノコックスが持つ遺伝的情報(ミトコンドリアゲノム)を解析することで仮説と一致して北海道のエキノコックスはセントローレンス島に起源をもつ可能性を明らかにした。さらに北海道東部には中国四川省の寄生虫と近縁な集団が存在することが判明している。
研究グループは「エキノコックスの拡散における人為的影響を強く示すものであり、新たなエキノコックス症の流行拡大の防止に貢献する重要な知見となる」と評価している。