東京工科大学の佐藤淳教授らの研究グループは16日、ヒト血清アルブミン(HSA)にヒトラクトフェリン(hLF)を融合させることで、HSAのがん細胞内への取り込みが飛躍的に向上することを見出せたと発表した。抗がん剤など薬物送達を促進する「DDS技術」としての応用される可能性もある。
HSAは負に帯電する酸性タンパク質。一方がん細胞表面には、負に帯電する糖鎖である硫酸化グリコサミノグリカン(GAGs)が存在している。そのため、静電的反発によりHSAは細胞表面に近づくことが難しく、細胞内取り込みシグナルを十分に活性化できないことが分かった。
hLFはGAGsと結合する性質を有しており、主に細胞表面に集積する。一方、HSAにhLFを融合させたタンパク質(hLF-HSA)は、その細胞内集積が飛躍的に向上させた。hLF-HSAのhLFは、がん細胞表面のGAGsと結合する際に、融合したHSAを強制的に細胞表面へ近づけている。その結果、受容体への結合が促進され、がん細胞への集積が飛躍的に高まることが判明した。
研究グループは「hLFは自然免疫で機能するタンパク質であり、抗腫瘍活性を示すことが分かっている。hLFにHSAを融合することで、がん細胞内取り込みが向上するとともに、その抗腫瘍活性も増強されることから、hLF-HSAの抗がん剤としての開発ができる可能性がある」とコメントしている。