理化学研究所(理研)の梅原崇史チームリーダーや東京理科大学などの研究グループは16日、多くのタイプのがん細胞で高発現しているタンパク質「GAS41」が、後成遺伝情報(エピジェネティック情報)を担うヒストンH3タンパク質のアセチル化修飾を認識し、特定の遺伝子の発現を活性化する仕組みを発見した。
人などのゲノムDNAはヌクレオソームという構造を形成して凝縮している。エピゲノムはどの遺伝子のヌクレオソームをその転写に先立って解きほぐすかを制御する。
研究グループは構造生物学、生化学、細胞生物学の手法でGAS41の構造と機能を解析。その結果、GAS41タンパク質が、ヒストンH3の「N末端」と「N末端から数えて14または27番目のリシン残基のアセチル化修飾」をそれぞれ異なるポケットを用いて認識し、ヌクレオソームにH2A.Zというヒストンの変種タンパク質の導入を促進することで、特定の遺伝子を転写しやすくする仕組みを明らかにした。
研究グループは「今回明らかになった構造情報を活用することで、がん制御に向けてGAS41を選択的に阻害する化合物を合理的に開発することが期待される」と説明している。