東京大学の新里宙也准教授を中心とする研究グループは16日、サンゴと褐虫藻の共生に重要な役割を担っている可能性が高い遺伝子群を特定した。15の共生関連遺伝子が褐虫藻に応じて発現量が増加することなどが明らかとなっている。
研究ではサンゴの一種「ウスエダミドリイシ」の初期ポリプに本来の共生褐虫藻の培養株を感染させた。そして、ウスエダミドリイシの約2万個の全遺伝子の発現量を網羅的に調べて、褐虫藻を与えない初期ポリプの遺伝子発現と比較することで、共に生活した時に発現量が変化する遺伝子を抽出している。
しかし、これらには褐虫藻が共生したことによって間接的に現れる量が変化する遺伝子なども含まれる。そこで、プラヌラ幼生時において共生褐虫藻が共に生活した時に現れた量が変化した遺伝子群との比較を行い、両者で共通して遺伝子発現が変動する15小の遺伝子を絞り込んだ。これらは共生に直接関連すると考えられる。
次に、特定した関連遺伝子の機能を推測するため、アミノ酸配列中の機能領域の探索を行った。その結果、ほとんどの関連遺伝子は保存された機能領域を有しており、一部の遺伝子はよく調べられているモデル生物のショウジョウバエなどが持つ遺伝子とも相同性が見られている。
一部の関連遺伝子には、ウスエダミドリイシが含まれるミドリイシ属サンゴが持つ独特の遺伝子である可能性が解析によって明らかになった。
研究グループは「遺伝子重複が褐虫藻と安定した共生関係を築く進化の原動力であったこと、サンゴの共生メカニズムは一様でなくそれぞれの種ごとに微調整されている可能性が考えられる」としている。