理化学研究所の三品達平特別研究員らの共同研究グループは、ハリガネムシのゲノムにカマキリ由来と考えられる大量の遺伝子を発見。この遺伝子の水平電波がハリガネムシによるカマキリの宿主操作の成立に関与している可能性を示したと16日に発表した。
ハリガネムシはカマキリなどに寄生する昆虫。もともとは水中に生息しているが、水生昆虫に寄生した後に陸上で別の昆虫に食べられることで、その捕食者を宿主とする。腹の中で育ったハリガネムシは、寄生した虫を水辺に誘導して水の中へ戻っていく。
研究グループは、寄生による入水行動をさせられる宿主カマキリの全遺伝子発現「トランスクリプトーム解析」を行った。宿主操作に伴う明瞭な変化はカマキリではなく、ハリガネムシのみに見られたことから、寄生虫によって生合成された分子が宿主の行動操作に関わっている可能性が示唆された。
さらに、発現量が変化したハリガネムシ遺伝子には、宿主であるカマキリ遺伝子とDNA塩基配列レベルでよく似ているものが多く含まれており、それらの遺伝子の中には、カマキリの行動操作に関係し得る機能を持つものが見出されている。
こうした結果から、ハリガネムシは宿主であるカマキリから大規模な遺伝子水平伝播を受けることで宿主操作を成し遂げていること可能性が明らかになった。