東北大学の金森義明教授らの研究グループは16日、ナノメートルサイズの周期構造で構成されるアルミ製遮熱メタマテリアルを開発し、熱となる近赤外波長は反射するが5G/6G通信帯の電波(可視波長)は透過する、透明な遮熱窓の基材を作製することに成功したと発表した。自動車用遮熱窓などへの応用が期待され社会課題解決の一助となることが期待されている。
研究グループは、ナノ周期構造で構成されるアルミ製遮熱メタマテリアルを開発し、ガラスなどの窓表面に形成することで、熱となる「近赤外波長」は反射するが、5G/6G通信帯の電波(可視波長)は透過する、透明な遮熱窓の基材を作製することに成功した。
作製した遮熱メタマテリアルの顕微鏡画像では、石英ガラス基板上にアルミからなる十字パターンのメタマテリアル単位構造が、周期460ナノメートルで二次元周期状に形成されている。3.3センチメートル×4.0センチメートルの領域内に、均一にメタマテリアル構造が形成される。
遮熱メタマテリアルの可視波長~近赤外波長領域における反射率特性と6G通信帯における透過率特性は、近赤外波長(約1.1μm、周波数約273THz)において、反射率80%超が得られ、ある領域では最大反射率86.1%が得られた。
この数値は、文献で報告されている遮熱材料の中で最高値。また、有限要素法に基づく電磁界の数値計算結果と実験値は一致している。テラヘルツ波領域における透過率特性については、テラヘルツ時間領域分光法により測定した結果、6G通信での利用が期待されている0.2~0.3THz 付近の周波数において、80%程度の高い透過率が得られ、有限要素法に基づく電磁界の数値計算結果ともよく一致した。
さらに、5G通信に割り当てられている28GHz帯の周波数において、80%程度の高い透過率が得られることを計測により確認。このことから、5G/6G通信帯において実用レベルの高い透過率特性が得られることを実証できた。大気の温度を高める近赤外の周波数(約273THz)は反射して通さず、5G通信帯(28GHz帯)/6G通信帯(0.2~0.3THz)の電波は通す特性が得られた。
作製した遮熱メタマテリアルは、可視波長範囲で最大77.2%の高い透過率を有し、60度の傾斜角度をつけても約50%以上の透過率が得られた。また、遮熱メタマテリアルの背後に映る風景を、広い傾斜角度範囲において明瞭に撮影することができ、作製した遮熱メタマテリアルは透明遮熱窓としての使用に好適であることが実証された。
研究グループは「開発した遮熱メタマテリアルは、半導体微細加工技術を用いて作られるため、メタマテリアルの形状や寸法を調整でき、反射ピーク波長をニーズに合わせてチューニング可能です。ナノインプリントなどの技術を用いることで、将来は安価で大面積の遮熱メタマテリアルが実現できると考えられる」としている。