横浜市立大学の小豆島健護助教が所属する研究グループは13日、米国デューク大学などとの共同研究により、糖尿病性腎臓病の進展に乳酸代謝が関与していることを尿などにおける代謝産物を解析する「メタボローム解析」や細胞における遺伝子発現を調べる「シングルセルRNAシーケンス解析」による網羅的解析を用いて解明したと発表した。
研究では、小豆島健護助教らが共同で開発した糖尿病性腎臓病患者の病態を反映したモデルマウスにメタボローム解析やシングルセルRNAシーケンス解析を用いることで、糖尿病性腎臓病の新規病態メカニズム解明を実施。さらに、動物実験で得られた結果を糖尿病性腎臓病患者の臨床検体を用いて臨床的にも検証している。
それによると、糖尿病性腎臓病マウスの腎臓ではエネルギー代謝障害が起こっており、メタボローム解析ではミトコンドリアでエネルギー物質を産出するための「TCA回路」および乳酸代謝の障害が顕著に認められた。これらの変化は糖尿病性腎臓病の病勢マーカーである尿アルブミン排泄量と相関を示しましたが、特に腎臓の乳酸量と強いつながりがあると分かった。
シングルセルRNAシークエンス解析では、乳酸代謝異常の首座が近位尿細管にある可能性が示唆。また、臨床で糖尿病性腎臓病の治療で一般的に使用されるARBを投与したところ、腎エネルギー代謝にともなう乳酸蓄積は軽減し、尿アルブミン排泄量も減少。糖尿病性腎臓病患者においても、尿中乳酸排泄量が尿アルブミン排泄量と強い関連を示し、尿中乳酸排泄量が多い患者ほど腎予後が不良であることが統計学的に証明された。
研究グループは「腎エネルギー代謝障害に関する研究が進むことで、腎乳酸が糖尿病性腎臓病の予後予測マーカーだけでなく、新規治療戦略にもなり得ることが期待される」としている。