近畿大学の門前一教授らの研究グループは13日、早川ゴム㈱と共同で、患者の皮膚に目印をつける際にマーカーとして使用する、発がん性物質を含まない「サージカルスキンマーカー」を開発したと公表した。子どもにも使用できるより安全な皮膚マーカーとして、臨床現場での活用が期待される。
これまで使われてきた皮膚マーカーペンに含まれるメチルロザニリン塩化物が、2014年にWHOで発がん性が指摘され日本でも22年から製造されていない。安全でなお借る性能と利便性も高い皮膚マーカーの開発が急務となっている。
研究グループは、早川ゴムと共同で、安全な化粧品材料から、発がん性物質を含まない皮膚マーカーを開発。インクのにじみや消えるまでの時間、患者に使用しての問診による評価を行った。
耐久性試験では、油性マジックとサージカルスキンマーカーを同時に塗布。線が消えて見えなくなるまでの時間を比較した結果、油性ペンは平均3.6日で視認できなくなるのに対し、サージカルスキンマーカーは平均7.2日間にわたり視認できた。
臨床試験では、56人の放射線治療患者の皮膚に3カ月間マークを描き、症状や皮膚変化を観察した結果、油性マジックなどでは報告されていた合併症は見られず、安全に使用できることが判明した。
門前教授は「臨床試験では、合併症や皮膚変化の発生も確認されていない。この革新的なマーカーは、安全で快適な臨床現場の確立に向けた一歩であり、患者と医療提供者の安心安全を実現する新たな選択肢となる」と評価している。