東京医科歯科大学の烏山一特別栄誉教授らの研究グループ13日は、北里大学との共同研究により、アトピー性皮膚炎の治療薬である「ジファミラスト」が希少な免疫細胞である好塩基球からのインターロイキン4(IL-4)産生を阻害することで、マウスのアトピー性皮膚炎症状を改善していることを突き止めた。これにより新たなアトピー性治療戦略の開発につながる可能性もある。
研究グループは、まずアトピー性皮膚炎マウスモデルに対するジファミラスト軟膏の効果を検討するため、マウスの耳にアトピー性皮膚炎を引き起こした。炎症が顕著となった時点(炎症誘導の4日後)からジファミラスト軟膏を毎日塗布したところ、肉眼像が改善され、皮膚における炎症細胞の数も減少した。以上から、ジファミラスト軟膏はアトピー性皮膚炎マウスモデルに対して治療効果を持つことが解明された。
さらに研究グループは、ジファミラストの塗布により炎症を起こした皮膚におけるIL-4の量が減少することを見出した。そこで、ジファミラスト軟膏の治療効果は皮膚におけるIL-4産生を抑制することによるためではないかと考え、IL−4欠損マウスを用いた実験を行った。
その結果、ジファミラスト軟膏の治療効果はIL-4欠損マウスでは見られなくなることが分かった。さらに、このモデルにおけるIL-4の産生細胞を検討したところ、希少な免疫細胞である好塩基球が、皮膚における主要なIL-4産生細胞であることが判明。
そこで、好塩基球を除去したマウスや好塩基球特異的にIL-4を欠損したマウスを用いてジファミラストの効果を検討したところ、これらのマウスでもジファミラストの治療効果は認められなかった。以上から、ジファミラストは好塩基球からのIL-4産生を抑制することでアトピー性皮膚炎への治療効果を示すことが解明された。
最後に、研究グループはジファミラストが好塩基球によるIL-4の産生を直接阻害するのかを試験管内で検討した。その結果、ジファミラストはさまざまな刺激により活性化した好塩基球からのIL-4産生を抑制することを見出した。
さらに、遺伝子発現の定量方法「RNAシーケンス解析」により、ジファミラストを添加した好塩基球の遺伝子発現を網羅的に調べたところ、ジファミラストはERKシグナル経路を一部抑制することで好塩基球からのIL-4産生を抑制することが示唆された。
研究グループは「好塩基球や好塩基球の産生する分子がアトピー性皮膚炎の有望な治療標的となることが示唆され、今後の開発の伸展が期待される」としている。