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鮮やかに色づく亜鉛 東大教授らが可視光吸収を示すZn錯体の創出成功

東京大学の砂田祐輔教授らの研究グループは11日、複数の亜鉛(Zn)原子を近づけるシンプルな分子設計により、従来困難とされてきた可視光吸収を示すZn錯体の創出に成功したと発表した。これまでの常識を覆す大きな成果だ。

研究では、まず、二種の類似したケイ素(Si)架橋配位子を用い、dzn-znが大きく異なる二種類のZn二核錯体1および2を新規に設計。錯体1は従来のZn²⁺錯体と同様に無色の化合物であった一方、錯体2においては、黄色に色づく化合物となった。単結晶X線構造解析の結果、錯体1および錯体2におけるdzn-Znの値は大きく異なり、錯体1が約5.71Åであった一方、錯体2は約2.93Åと非常に短いdzn-znを有することが分かった。

光物性評価および量子化学計算を組み合わせた解析の結果、錯体2においては短いdzn-znによってZn²⁺中心の空軌道間に相互作用が生じ、それに基づき励起状態エネルギーが大幅に低下することで、可視光吸収を実現したと判明。

一方の長いdzn-Znを有する錯体1においては、そのようなZn²⁺間の相互作用は観測されていない。このことは、量子化学計算に基づき求めた最低空軌道(LUMO)の分布図により視覚的にも理解でき、錯体1においては、1つのZn原子上に分布している一方、錯体2においては、2つのZn原子上にまたがって分布している様子が確認できる。

以上より、適切な配位子を用い、Zn²⁺間の距離を短く制御する分子設計を行うことで、可視光吸収を実現し、色を表すZn化合物が合成できると明らかになった。また、可視光吸収を示した錯体2は、液体窒素温度下において、青色光を照射すると、赤橙色の可視光発光を示すこともわかりました。この結果により、Zn²⁺錯体は可視光発光材料としても有望となる可能性が見出された。

研究グループは「本研究で得られた設計指針をもとに、可視光吸収・発光を示す新たなZn錯体の創出に取り組みつつ、Znのさらなる可視光機能開拓に挑戦していく」と意気込む。