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中性子と放射光による水の観察 豊田中研など3者が世界で初成功

㈱豊田中央研究所 (豊田中研)、日本原子力研究開発機構(JAEA)、総合科学研究機構 (CROSS)の研究グループ は11日、車載用大型燃料電池内部の水の挙動を明らかにすることに成功したと発表している。中性子ビームと放射光X線を使った水の観察は世界初だ。

燃料電池の発電性能の向上には、材料開発だけでなく、発電によって生成される水の管理が重要。水が燃料電池内部に滞留すると、電極への水素や酸素の供給が阻害され、発電性能が低下する恐れがある。そのため、電池の外に水を効率的に排出するための技術開発が必要だ。

そのためには、燃料電池内で水を観察し、滞留・排出機構を理解しなければならない。燃料電池は金属ケースで覆われており、内部の水を観察するのが技術的に難しい。開発現場ではシミュレーションが力を発揮してきたが、実際の様子を観察することが強く求められてきた。

トヨタ自動車㈱が2020年に販売したFCEV「MIRAI(第2世代)」の実機セルを用いて、発電中の水分布を大強度陽子加速器施設(J-PARC)のイメージング装置「RADEN」にて広視野した結果、MIRAIの開発過程においてシミュレーションで予測されていた特徴的な水の分布を実際に確認することができた。

さらに、実機セルと同じ電極材料を用いて小型セルを作成し、大型放射光施設(SPring-8)にて、発電中のセルにおける積層方向の水分布を観察したところ、カソード(電極材料)からアノード(電極材料)への水移動が、実機セルで観察された水分布に影響を及ぼしていることが判明した。

研究グループは「開発した車載用燃料電池の水解析技術は、燃料電池の性能に影響を及ぼす滞留水の解析に応用でき、将来の燃料電池の高性能化に不可欠な役割を果たす」とコメントしている。