東北大学多元物質科学研究所の新家寛正助教らを中心とする研究グループは、先行研究でさまざまな氷と水の界面にできる通常の水と混ざらない未知の水を発見している。未調査であった「高圧氷V」と水の間にも未知の水ができることを見出したと10日に発表した。この知見はこれまで理解できなかった水に関わる現象の解明につながる可能性もある。
研究グループはこれまで調査されていなかった「高圧氷V」を研究対象とした。マイナス10度の低温室にアンビル型高圧発生装置と観察用の微分干渉顕微鏡を設置。水を443MPa(4372気圧)以上の低温高圧の条件においた。これにより、氷Vの結晶を作り、加圧もしくは減圧に伴う氷V結晶の成長と融解の過程を顕微鏡で観察した。
観察により未知の水の生成に伴い生じるパターンが周期的な波模様を示すことが分かり、水の液膜がスピノーダル脱濡れのようなダイナミクスを示すこと、その初期過程において波模様に異方性が生じることを突き止めた。
こうした現象は未知の水に氷V結晶の異方性を反映するような性質が無ければ説明できない。従って、未知の水は一時的に異方性を示す流体である液晶の性質を持つことが示唆されている。
研究グループは「水/氷界面における未知の水の生成機構および多様性の解明は、奇妙な液体である水の物性の起源解明やその結晶化過程だけでなく、人類がこれまで理解できなかった水の関わる現象の解明にも分野を問わず貢献することが期待できる」とコメントした。