東京大学の上坂怜生特任研究員らからなる研究グループは11日、ワタリアホウドリという世界最大の飛翔性海鳥が海面から飛び立つ際には目的地の方向に関わらず風上を向くことなどを明らかにしたと発表している。研究が進めば海洋生態系の保全計画をより適切にできるかもしれない。
研究グループは、ワタリアホウドリにGPSや加速度計を装着することで移動経路や体の動きを記録し、飛び立ちを調べた。
研究の結果、海洋環境条件と飛び立ちの労力の関係性が判明。例えば波の高さと離水までにかかった時間を比べると、波が高ければ高い程より短い時間で飛び立てると分かった。次に、風と波が飛び立ちに与える複合的な影響を調べるため、飛び立ち時の環境条件を風の強弱と波の高低で4グループに分けて比較した。
すると、風と波の両方が弱い場合にのみ飛び立ちに必要な労力が増え、風か波のどちらか一方さえ強ければ容易に飛び立てていることを突き止めた。さらに、ワタリアホウドリは目的地の方向に関わらず風上の方向(向かい風)に飛び立つことも確かめられた。
風が強いと飛び立ちがやすい理由は、ワタリアホウドリが風上を向いて飛び立つと風が強い時には翼を羽ばたかせる速度が上がり、大きな揚力を獲得できるためだと考えられるという。波が飛び立ちを容易にする理由は明らかなっていないが、波の形状により風が弱い時にでも飛び立ちに好ましい上昇気流が生み出されている可能性もあるようだ。
研究グループは「飛び立ちに伴うエネルギー消費量の計算がさらに進めば、海洋生態系の将来の予想や保全の計画をさらに適切に行うことができると考えられる」と述べている。