大阪大学の境慎司教授らの研究チームは11日、動物細胞を含んだ柔らかなゼリー状の3次元構造物を、3Dプリンターを用い、その内部へのプリント補助剤の混入を抑えて、精度よくバイオプリントする方法の開発に成功したと発表している。
研究グループは、プリント補助剤を満たした容器中での3Dプリントを行わずに、柔らかな構造物を3Dプリントする方法を検討した。プリント補助剤と細胞を含むインクを交互に積層する方法を採用するとともに、インクを固めるために、プリント補助剤とインクが接触するとはじめてインクが固化する方法の開発に取り組んだ。
研究では、動物細胞、体内に存在するヒアルロン酸の誘導体、及び西洋わさびから抽出される酵素を含む溶液をインクとして使用し、微量の過酸化水素を含むエコー検査用ゼリーをプリント補助剤として用い、これらを交互に積層することで3Dプリントを行った。その結果、インクに含まれる動物細胞を生きたまま含む立体構造物をプリントすることに成功している。
また、人の肝臓由来の細胞が構造体内部で成長することを確認。さらに、エコー検査用ゼリーが、カルシウムと反応すると簡単に除去できることを見出し、プリント補助剤として適していることを示している。
研究チームは「3Dバイオプリンティングで得られる構造物は、人の組織や臓器を置換する目的だけでなく、薬物開発時の評価に使用することを目的としても作製が試みられている。この研究の成果は、それらに寄与することが期待される成果だ」とコメントした。