文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
ニホンミツバチは3つの異なる地域集団に分類できる 東北大研究Gがゼノム解析から確認

東北大学の河田雅圭総長特命教授らの研究グループは10日、日本各地の105個体のニホンミツバチの全ゲノム配列を解析し、遺伝的に異なる3つの地域集団(北部、中央部、南部)を確認したと発表した。研究から得られた知見によって、ニホンミツバチを保全していくための貢献が可能だとしている。

この研究では、日本列島全域から採集された計105個体のニホンミツバチの全ゲノム配列の情報を新たに解析した。

全ゲノムスケールの高解像度で集団の遺伝構造を評価した結果、日本列島内の集団は、大きく北部(東北-関東-中部地方)、中央部(中国地方)、南部(九州地方)の3つの地域に区別できることが判明。各個体の遺伝的組成から、人為的に移動したと推定される個体とそうでない個体を判別することが可能であると分かった。

続いて、3地域のそれぞれで自然選択を受けて局所適応に関係している候補遺伝子を検出した。さらに、温度、積雪量、降水量など、南から北へ緯度にそって変化する環境に伴って頻度を変化させている環境適応に関する候補遺伝子の検出を行った結果、各地域で局所適応している遺伝子は、緯度にそって変化する環境へ適応している遺伝子とは一致していない。

このことは、ニホンミツバチは、各地域の特異的な環境に適応しているため、温暖化による気温などの上昇に応じて北に移動するのを困難にしていることが示唆され、個体群の減少リスクを高める可能性があると推測された。また、異なる地域間で個体を移動させることは、移動した個体が移動先の地域に適応できない可能性があることが示唆される。

研究チームは「研究で検出された局所適応に関わる候補遺伝子が具体的にどのような環境で、どのように適応に関与しているのかを調べることで、ニホンミツバチを保全していくための応用面での貢献が可能になると考えられる」としている。