京都大学の緒方博之教授らの研究グループは10日、巨大ウイルスが進化の過程で幾度となく寒冷な海域に進出して遺伝子組成を変化させることにより適応させてきた可能性を明らかにした。巨大ウイルスの環境に対する適応メカニズムは他の生物とは異なる可能性が示されている。
研究グループは、地球全体の海洋微生物ゲノムデータに基づき、海洋巨大ウイルスの分布を調べて寒冷域と温暖域にいるウイルスの比較ゲノム解析を行った。その結果、巨大ウイルスは進化の過程で繰り返し温暖から寒冷域に、またはその逆へと生息域を変えてきたことが推定された。
寒冷域のウイルスが特有に保持する遺伝子が多数あり、こうした遺伝子の一部は栄養塩の取り込みやウイする粒子表面構造の修飾に関わる遺伝子であった。巨大ウイルスは新たな遺伝子を獲得することにより特殊な環境やそこに生息する宿主に適応してきたと研究グループは考察している。
グループの研究者は「巨大ウイルスが遺伝子プールの変化を通して極地の環境に適応しており、そのメカニズムは他の生物とは異なる可能性が示唆された」としている。