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胚細胞がGAPを形成しアレルゲンの吸収に重要な働き 順天堂大の研究Gが発見

順天堂大学の安藤智暁准教授らの研究グループは11日、眼の表面などに存在する粘液を放出する「杯細胞」が花粉に反応して「Goblet cell associated antigen passage (GAP)」という外の物質を細胞に渡す構造を形成し、アレルゲンの取り込みに重要な働きをしていることを初めて明らかにした。

研究グループは、アレルゲンを蛍光色素で染色し、粘膜組織内でどのように分布するかを可視化。アレルゲンのみを点眼した場合と、花粉の殻とともに点眼した場合とを比較したところ、花粉の殻とともに点眼した場合には、杯細胞が細胞内に大量にアレルゲンを取り込み、その直下の免疫細胞に受け渡している様子が観察された。

この現象は花粉の殻と蛍光アレルゲンを点眼してから5分以内に観察されたことから、杯細胞を通じた能動的な取り込みが、アレルギー症状発症までの時間が早いことと関連している可能性が考えられる。

そこで、マウスを用いた花粉症モデル実験において、花粉の点眼後に眼を洗ってみたところ、10分後に洗眼したマウスと、洗眼しなかったマウスとでは、花粉症の発症レベルにほとんど差がないことを見出した。

つまり、花粉が眼に付着してすぐに、杯細胞を介したアレルゲン取り込みが行われてしまい、その後に花粉がついたままであるかどうかはほとんど影響がないということが分かった。

眼におけるGAP形成の仕組みを調べてみると、眼の表面で触覚などの感覚を司る三叉神経が重要な役割を担っており、神経を麻痺させるとGAPが形成されなくなることが判明。杯細胞からの粘液放出を促すアセチルコリン刺激では、眼のGAP形成はみられないことから、粘液放出とGAP形成は別々の信号で制御されていることも突き止めた。

研究グループは「今後はこの信号の使い分けを解明し、眼を保護しながらアレルギーを抑制する方法の探索や、鼻など他の粘膜におけるGAPの役割の解明など、花粉症の予防や治療に繋がるように、さらなる研究を行っていく」としている。