熊本大学の竹林実教授らによる研究グループは他大学との共同研究により、第一世代抗うつ薬が細胞膜に発現するたんぱく質の一つ「LPA1受容体」バイアス型作動薬として働き、抗うつ作用に関与するとモデルマウスを用いて明らかにした。
研究では抗うつ薬との作用点の一つとして見出したLPA1受容体に着目。複数の種類の抗うつ薬を用いて受容体に作用するか検討を行った。その結果、第一世代抗うつ薬には共通して活性化する作用があることを明らかにした。一方で、第三世代抗うつ薬には活性はほとんど見られなかった。
受容体が活性化すると、細胞内でGタンパク質およびアレスチンへシグナルを伝達し、それぞれ異なった作用を引き起こす。そこで、第一世代抗うつ薬について、LPA1受容体の細胞内シグナルを詳細に調べたところ、アレスチンのシグナルに比べ、Gタンパク質のシグナルに偏って活性化するバイアス型作動薬であると判明した。
さらに、LPA1受容体バイアス型作動薬が抗うつ作用に重要であるか調べるため、マウスを用いた行動実験を行った。その結果、同じLPA1受容体作動薬でもバイアス型作動薬では抗うつ薬と同様に抗うつ作用が見られたが、非バイアス型(バランス型)作動薬では抗うつ作用は見られなかった。従って、LPA1受容体バイアス型作動薬が抗うつ作用に重要であることが明らかとなった。
研究グループは「第一世代抗うつ薬がなぜ第三世代抗うつ薬よりも治療効果が高いのかという疑問を説明する一つの可能性として、LPA1受容体バイアス型作動薬としての薬理作用が存在することを示すことができた」と話している。