産業技術総合研究所(産総研)の島田寛之上級主任研究員らの研究グループは、プロトン伝導セラミック燃料電池(PCFC)の発電性能を飛躍的に向上し、実験データを再現できる計算モデルを構築した。発電効率70%以上が実現できることを明らかにしましたと10日に発表した。
PCFCは他の燃料電池よりも高い発電効率が理論的に可能。ところが、実際のPCFCでは電解質が正孔を伝導して内部短絡し、発電効率が低下する欠点がある。
研究グループは、電極反応や電解質内の物質移動を表現する数式に、内部短絡の影響を組み込むことで、PCFCの出力密度や発電効率を再現できる計算モデルを構築。さらに、実験により取得したプロトン伝導性電解質の材料物性などを上記の計算モデルに入力することにより、より正確な計算を可能にした。
この計算モデルを用いることにより、大掛かりな実証実験を行わなくても、さまざまな条件下でのPCFCの発電効率を予測できるようになり、電解質膜厚などPCFCの最適な構成や作動条件を推定することが可能となった。
計算モデルから算出した値と今回開発したPCFCの測定値は、高い精度で一致した。計算モデルを基に、電解質膜厚や作動温度、燃料利用率などの条件を設定して発電特性を推定した結果、開発したPCFCは70%を超える発電効率が実現可能であることを明らかにした。
産総研は今後について「今回の計算モデルで、作動温度500℃であればPCFCで発電効率70%が実現可能であることが明らかとなりました。今後は、電極材料の改良などによって、実際に500℃で高効率発電できることを実証し、PCFCの社会実装を進めていく」としている。