大阪大学の西田幸二教授らの研究チームは10日、脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養上清(AdMSC-CM)が角膜上皮細胞に対し、細胞死の抑制、炎症性サイトカインの発現抑制、バリア機能を高める効果があることを明らかにした。ドライアイ治療薬開発や他の疾患への応用も期待されている。
研究グループは脂肪組織由来間葉系幹細胞を容器の80%まで培養した後、72時間培養後のAdMSC-CMを回収して塩化ベンザルコニウム(BAC)誘導型角膜上皮障害モデルなどの評価を行った。
その結果、AdMSC-CMは角膜上皮細胞に対し、細胞死の抑制、炎症性サイトカインの発現抑制、バリア機能を高める効果があることを示した。これらは、細胞死などを制御する調節因子「TGF-β」や炎症などに関わる「JAK-STAT」が関与していることが分かった。また、AdMSC-CMの点眼はドライアイモデル動物に対して角膜バリア機能を改善して角膜上皮障害を抑えた。
研究チームは「AdMSC-CMの有効成分の探索や詳細な作用機序の解明を行うことで、ドライアイ治療薬として開発を進めるだけでなく、他の疾患に対する応用や新しい作用点を介した治療薬の開発、間葉系幹細胞の効果の機序解明につながることが期待される」としている。