新潟大学の五十嵐道弘教授らの研究チームは6日、普通の脂肪酸よりも長い炭素鎖「極長鎖脂肪酸」を合成できないようにしたマウス脳を調べ、それが正常な神経細胞の発達に必要不可欠であることを証明した。
研究では極長鎖脂肪酸「GPSN2」を合成する酵素を動かなくしたKOマウスを使って、その性質を詳しく調べた。これを欠いたマウスは生まれてくることができず、胎生9.5日で死亡。このような発生初期での全例死亡は、この遺伝子が臓器の発達に必要不可欠であることを意味する。KOマウスの脳を調べると神経回路形成が強く障害されていた。これは正常な発達ができなくなることを意味している。
脂質分子種を網羅的に発見する実験法「リピドミクス」を使うと、このKOマウスで非常に減っているのはセラミドという資質に含まれている脂肪酸であると証明された。
この効果は、極長鎖脂肪酸を持ったセラミドのみに認められ、通常の長さの脂肪酸を持つセラミドでは生じない。またセラミドではなく、極長鎖脂肪酸を含む普通の膜脂質を投与しても変化は起きなかった。極長鎖脂肪酸は脂質ラフト形成に必要不可欠で、これによって神経細胞の極性形成がスピーディに起こり、成長円錐の脂質ラフト機能が保たれるものと結論づけた。
研究グループは「極長鎖脂肪酸の代謝と役割の関係性は、研究をはじめて端緒についたばかりで、今後の展開で脳機能や脳発達への具体的意義がより明確になることが期待される」としている。