東京大学の求幸年教授などの研究チームは10日、物理的な脳内の学習メカニズムを模倣した「人工ニューラルネットワーク」として用いる機械学習手法「物理リザバーコンピューティング」において、熱的なノイズに強い超大規模並列計算を実現可能にする新たな動作原理を発見したと発表した。次世代情報化社会の実現を加速する契機として期待されている。
研究では、磁性体を用いた物理リザバーには電子の持つスピンのダイナミクスを通じて入力情報が入力周波数成分に保持されていることを見出し、周波数フィルタを用いた新しい動作原理を開発した。
これにより、磁性体物理リザバーコンピューティングのデバイス実用化における大きな障壁であった熱ノイズへの脆弱性を解決するとともに、膨大な数の並列計算単位を単一の磁性体に集積する超大規模並列化を数値シミュレーションで実証した。
この成果は、個々の端末でGPU型大規模並列情報処理を行うリアルタイムAIハードウェアの基盤技術として、次世代情報化社会の実現を加速する契機となることが期待される。
研究チームは今後について「磁性体の綿密な物資探索と、その物理リザバーとしての情報処理性能評価を両輪として行い、人類社会の発展に資する革新的AIハードウェア技術の開発へ取り組んでいく」としている。