流通経済大学などの研究チームは、軽運動を10分間行うことで記憶力が即時的に向上することを健常高齢者において初めて明らかにした。また、運動時に瞳孔怪を計測した結果から、記憶力向上のメカニズムとして脳内の覚醒機構が関与する可能性を新たに示した。
研究では認知症でない健常な高齢者21人が実験に参加。すべての参加者は10分間運動をした後に、記憶テストを行う運動条件と運動の代わりに座位安静を保つ安静条件の2条件で行った。
運動は自転車エルゴメータでのペダリング運動をした。その強度は低くして、心拍数の平均値は93.3拍/分。運動中は目前のスクリーンを注視し、専用ツールで瞳孔怪を計測した。記憶テストではよく似た2つの写真を提示して違いに気付くことができるかを調べることで、細部まで記憶する能力を評価している。
実験の結果、運動後の記憶テストの成績は安静条件に比べて優れており、その差はとくに類似度の高い課題において顕著であった。また、運動時は安静時に比べて瞳孔が拡大すること、その程度が大きいほど記憶力への効果も大きく、瞳が運動効果の媒介因子であることが明らかになった。この結果は低強度運動による記憶力の向上に脳内覚醒機構が関わることを示唆している。
研究チームは「短時間の低強度運動を1回行った際の即時的な効果が明らかになったが、これを習慣的に行うことによる効果やその脳内メカニズムについては今後の検討課題」としている。