理化学研究所(理研)の浜本隆二チームリーダーらの研究グループは4日、卵巣がんの発がんモデル細胞を用いて生物学的情報を分析する「マルチオミックス解析」を行って卵巣がんの新しい発がんメカニズムを解明した。卵巣がんの有効な治療法に結び付く可能性もある。
研究グループは、高異型度漿液性卵巣がんの発生母地である「卵管分泌上皮細胞」に遺伝子導入を行い、卵巣がんの予後不良なサブタイプの段階的な発がんモデル細胞を樹立。マルチオミックス解析をした。
その結果、卵巣がん早期の段階で、遺伝子の転写を制御するたんぱく質の一群「AP―1ファミリー」が活性化する一方、細胞の発生などに関わるたんぱく質「GATAファミリー」が不活性化することが判明。これらの異常が複合的に作用して発がんに重要な過程が促進されることが明らかになった。
研究グループは「MEK阻害剤を使用した個別化医療や、エピゲノム異常を標的とした新しい治療薬の開発を通じて、予後不良な高異型度漿液性卵巣がんに対する有効な治療法の開発に結び付く可能性がある」と説明する。