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名大などが新たな干ばつストレス応答機構発見 食糧安全保障への貢献に期待

名古屋大学などの研究チームは3日、葉のしおれが見られない程度の極めて初期の干ばつにおいて、植物体内のリン酸量が低下してリン酸欠乏応答が起こることを世界で初めて発見したと発表した。世界の食糧安全保障への貢献が期待されている。

研究チームは、軽度の干ばつを人為的に安定して誘導するため、水はけを良くすることを目的として畑の土を盛り上げる「畝(うね)」を利用した実験系を開発。さらに、6年間の畑での実証試験を通して、毎年変わる環境条件においても、畝により干ばつを安定して誘導することに成功している。

この実験系を用いた畑のダイズの網羅的解析から、アブシシン酸(ABA)の応答が起こる前の葉がしおれないレベルの初期の干ばつで、植物のリン酸量が低下してリン酸欠乏応答が起こることを突き止めた。

また、実験室におけるシロイヌナズナを用いた解析から、リン酸欠乏応答に関わる鍵遺伝子が、干ばつ初期の植物の生育に重要な役割を果たしていることを明らかにした。

研究チームは「干ばつに強い作物の開発や収量ロスをなくす灌漑の最適化などを通して、作物生産のレジリエンスを強化し、世界の食料安全保障に貢献することが期待できる」とコメントしている。