北海道大学の前川直也特任助教らの研究グループは2日、悪性腫瘍に罹患した犬12頭に対して、免疫から攻撃を逃れる仕組みを解除する犬用の「免疫チェックポイント阻害剤」の臨床研究を同大学で実施し、骨肉腫などにかかった犬で腫瘍の退縮が得られたことを世界で初めて発表した。犬においても免疫チェックポイント阻害薬の適用が拡大する可能性がある。
犬の腫瘍は放射線療法などによって治療されるが、完治に至らないケースも多く新規治療法の確立が急務だ。研究グループはこれまでに、免疫チェック阻害剤の1つである「抗PD―L1」抗体による免疫療法が口腔内悪性黒色腫において腫瘍の退縮をもたらすことを報告していた。だが、それ以外ではどのような種類のがんで治療効果が得られるか分かっていなかった。
研究では悪性腫瘍に罹患した犬12頭に抗PD―L1抗体を投与した。治療を受けた指/フッドパッドの悪性黒色種、骨肉腫、未分化肉腫などの犬のうち、鼻腔内線がんの1頭と骨肉腫の1頭で腫瘍の改善が認められた。
研究グループは「今回の検討では解析に含まれた犬の数が少ないため、鼻腔内線がんや骨肉腫をはじめとするそれぞれの腫瘍種ごとの安全性や有効性についてはまだ結論は出ておらず、より詳細に調べていく必要がある」と説明している。