鳥取大学の原田和記准教授らの茂木朋貴農学共同研究員らの研究グループは2日、ヒト用の抗菌薬である「セフメタゾール」が犬のESBL産生菌感染症に対する治療用候補薬と
なりうることを発見した。今後、セフメタゾールが犬のESBL産生菌感染症の治療に貢献することが期待される。
研究グループらは、ESBL産生菌の犬猫分離株を大量に収集し、これらに対してどのような抗菌薬が効力を発揮するかを確認するために実験室レベルで薬剤感受性試験を行った。その結果、大部分の分離株が現在国内で承認されている動物用抗菌薬に対しては耐性を示したのに対し、一部のヒト用抗菌薬に対しては感受性を示すことを発見した。
セフメタゾールはヒト用抗菌薬であるがゆえに、犬のESBL産生菌感染症に対して推奨される投与方法については未だ検討されていない。そこで、まず健常な実験犬にセフメタゾールを投与し、その血行動態から犬におけるセフメタゾールの薬理学的パラメータを算出した。
薬理学的パラメータには個体差が生じることが既に知られているため、モンテカルロシミュレーションにより1万頭の仮想母集団を作成することで、個体間のばらつきを考慮した。さらに、ESBL産生菌分離株の薬剤感受性試験結果から得られた最小発育阻止濃度の分布を踏まえて、セフメタゾールの血中濃度がターゲット値を超える治療成功率を算出。
その結果、菌種を問わずセフメタゾールの投与間隔を短縮させることで治療成功率が増加すること、ESBL産生菌の中でも大腸菌と肺炎桿菌に対しては6時間間隔の投与で80%以上の治療成功率が期待できることが明らかとなった。
研究グループは「本研究により犬のESBL産生菌感染症の治療薬という新たな一面が明らかとなった。このことにより、セフメタゾールが犬のESBL産生菌感染症の治療に貢献することが期待される」とコメントしている。