総合地球環境学研究所(地球研)を中心とした国内外の大学等の国際的な研究者チームが2日、29台の安価で正確な小型センサで構築した高密度観測ネットワークにより、インド北西部の大気汚染状況を初めて定量化したと発表。その結果、発生源を含むネットワーク観測が、野焼きが地域や複数州にまたがるスケールの大気汚染に及ぼす影響の理解に有益であることを示したとしている。
研究チームは、独自に開発したPM2.5センサおよび複数のガスセンサからなる小型大気計測器(CUPI-G)をインド北西部29カ所に設置。パンジャーブ州、ハリヤーナー州、デリー首都圏の広範囲にわたるネットワーク集中観測を2022年9月1日~11月30日にかけて実施した。
観測されたPM2.5濃度は、10月6~10日には60 µg m-3以下でしたが、その後、徐々に増加し、11月5~9日には500µg m-3に達する地域もあった。また、その後、11月20~30日には100 µg m-3程度に減少した。
年間および24時間のPM2.5曝露量に関するインドの国家大気質基準は、40µg m-3と60µg m-3であり、今回、パンジャーブ州、ハリヤーナー州、デリー首都圏で11月に観測されたPM2.5はそれより高濃度だった。11月2~3日と11月9~11日に発生した大部分の観測地点で500 µg m-3を超過する高濃度イベントについて、高濃度のPM2.5を含む空気塊の北西からの季節風による輸送過程を追跡することができた。
また南東の風下側ほど高濃度になる傾向、すなわち輸送中の粒子の2次生成(化学反応により大気中でガスが粒子化する現象)も確認されている。この研究により、発生源を含むネットワーク観測が、野焼きが地域や複数州にまたがるスケールの大気汚染に及ぼす影響の理解に有益であることが分かった。
地球研のプラビル・K・パトラ教授は「大気汚染物質の削減は、一般社会の大気汚染に対する理解増進が進んだときに初めて達成可能。結局のところ、大気汚染物質を排出する人々が最大の被害者だ」と述べた。