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太古深海熱水噴出孔環境でのアンモニアの濃集機構 JAMSTECが実証

海洋研究開発機構(JAMSTEC)の北台紀夫副主任研究員らは2日、東京大学の高橋嘉夫教授との共同研究により、太古の深海熱水噴出孔環境にアンモニアが濃集するメカニズムを明らかにしたと発表した。

研究グループは、深海熱水噴出孔環境に普遍的に存在する鉄硫化物(マッキナワイト)を電気還元することで、ゼロ価の鉄原子(Fe0)からなる吸着サイトを層構造中に生じさせ、アンモニアの吸着能を劇的に向上させられることを実証した。

マッキナワイトのFe0への還元(FeS+2H+2e‐→ Fe0 + H2S)は、‐0.6V(対標準水素電極電位)以下において進行し、48時間の実験では、太古の海水を模した水溶液(1molL–1 NaCl, 中性pH)から最大90%以上のアンモニアの吸着が達成された(初期濃度1 mmol L–1)。

今回明らかとなったアンモニアの濃集に有利な電位条件(‐0.6V以下)は、現存する熱水噴出孔環境でも観測されおり、地球上で十分実現可能な条件だ。加えて、太古の海洋底には、海底下の活発な岩石-熱水反応に起因して、高濃度の水素を含む還元的な(電位の低い)熱水が普遍的に噴出していた。

先行研究で示された、硝酸・亜硝酸からのアンモニアの生成や、アミノ化に対するマッキナワイトの反応促進能を加味すると、太古の深海熱水噴出孔環境は、その場に生じるありふれた自然現象の結果として、アンモニアの生成・濃集・同化に適した場であったと考えられる。

研究チームは「深海熱水発電のみならず、液体/超臨界CO2の噴出など、深海底で起きている興味深い現象の原理を解き明かす研究と、これらの現象が生命発生に果たした役割を明らかにする研究を展開し、地球や宇宙における生命の起源や初期進化の謎に挑戦していく」としている。