日本原子力研究開発機構(JAEA)の丹羽正和リーダーらの研究グループは、火山の過去のマグマ移動の痕跡を推定するための手法の1つとして「地理情報システム(GIS)」を用いた地形解析手法を構築したと発表した。約260万年前以降に活動した火山に対して、マグマの通り道の長期間にわたる変化を推定することが可能という。
研究では、過去1万年間の火口の分布履歴について既に観察されている22火山を対象に地形解析を実施。具体的には、火山を構成する等高線を用いて、伸びの方向、山頂以外を囲う等高線の分布、それで囲われた領域の面積などをGISを用いた解析により収集した。既存のGIS上のツールを組み合わせた独自モデルを使用することで多くの火山を短期間で探った。
その結果、不安定とされている火山は、山頂以外に高まりを見せる地形の面積の合計が、安定な火山と比べて大きいことが明らかになっている。このことから、マグマの通り道とされる火道の安定性は、面積データを使って単純に見分けられることが示された。
ここで火道安定型とされる火山は、同じ火道を使って何回も噴火する傾向があり、火山の形は次第にその道からマグマが走る方向に延びた楕円になっていくことが知られている。つまり、等高線の伸びの方向および高まりを示す分布から、放射状岩脈が発達する方向を推定可能だ。
この推定結果は、地形データから得られる1つの独立した結果にすぎない。火山の下の断層や地殻応力など他の情報と組み合わせることで、火山ごとにマグマの道がどのように変化してきたかを考察できる。
研究グループは「この方法を用いることで、火山の活動履歴が分かっていなかった山に対しても、マグマの通り道の変化の程度を推定することが可能となり、火山の防災・減災や地層処分における安全評価を検討する上で重要な情報を提供できる」としている。