東北大学の北村恭子教授らの研究グループは、300ギガヘルツ帯のテラヘルツ電磁波に作用するひずみフォトニック結晶を作製し、電磁波の伝搬方向を曲げることに成功した。次世代6G通信の電磁場制御用基板技術として期待される。
研究では規則正しい周期構造であるフォトニック結晶において、その格子点の位置を緩やかに変化させることで電磁波に対する時空間のひずみを発現させ、疑似的な重力効果として電磁波の伝搬方向を曲げられる可能性に着目。
そこで、均一な媒質と同様に等方的な性質が得られる低周波数領域において、フォトニック結晶の格子点を一軸に沿って、正方格子から長方格子状に緩やかに変化させた「ひずみフォトニック結晶」を考案した。
このような構造を微分幾何学的な観点から考察すると、格子点の配列の変化が格子ひずみとして発現し、電磁波の伝搬の軌跡はその測地線を描くことが予測される。誘電体としてのシリコンに着目し、基本周期を200ミクロンとすることで300ギガヘルツ帯のテラヘルツ電磁波に対して動作するひずみフォトニック結晶を作製した。
ひずみフォトニック結晶へテラヘルツ電磁波を入力すると、伝搬方向の曲げに相当する出力結果が得られた。電磁界シミュレーションともよく一致したことから、ひずみフォトニック結晶による電磁波に対する疑似重力効果の実証に成功した。
研究グループは「格子ひずみという新しい概念を生み出すとともに、疑似重力効果が得られた。今後、重力場が電磁波に与える影響の検証など、基礎物理科学の発展への寄与が期待される」とコメントしている。