海洋研究開発機構(JAMSTEC)は長島佳奈研究員らと北海道大学などの研究グループは、海洋に沈む黄砂のフラックスを定量的に評価する分析手法を新たに開発し、海洋への黄砂沈着フラックスとその季節性の解明に成功したと発表した。人為起源エアロゾルが海においてプラスの役割を果たしていると説明している。
研究では、海洋への黄砂沈着フラックスを基に、黄砂が西部北太平洋亜寒帯地域の表層に供給する溶存鉄の量を計算した。その結果、黄砂は海洋中層水に次ぐ溶存鉄の供給源であることが判明。
大気を介した海洋への鉄供給源として、黄砂に加え化石燃料の燃焼過程などに伴う人為起源エアロゾルが知られている。これに黄砂による溶存鉄を合わせた「大気を介した溶存鉄供給」の総量は海洋中層からの溶存鉄供給を含めた全体の鉄供給の4割程度を担っていることも明らかになった。
この結果は、健康に悪影響を及ぼす悪者と捉えられてきた黄砂や人為起源エアロゾルが海洋においては鉄の共有を通じて海洋基礎生産を支える大きな役割を果たしていることを意味する。
研究グループは「健康への被害や視程の悪さといったマイナスの面が注目されている黄砂だが、海洋においては生物にとって重要な鉄の供給源になりプラスの面があることが研究で量的に確かめられた」とコメントしている。
※沈着フラックス:単位時間・単位面積あたりの沈着量