順天堂大学と北里大学の共同研究グループは22日、膵β細胞でのみ特異的に遺伝子をノックアウトする新しい技術を確立したと発表した。短期間での膵β細胞特異的遺伝子ノックアウトを可能にした画期的な技術。簡便に試すことにより、遺伝子組み換えマウスの作出による本格的な検討に入る前のスクリーニングとして、膵β細胞研究を大きく加速させるとしている。2型糖尿病の病態解明を大きく加速させることが期待される。
研究では、まず膵β細胞特異的にCas9およびそのレポーターであるEGFP(緑色蛍光タンパク)を発現するマウス(βCas9マウス)を作製。次に、EGFPを標的としたgRNAを発現するAAVベクターを腹腔内に注射し、遺伝子ノックアウトの効率を検討した。
AAVの投与4週後に膵β細胞のEGFP発現を観察したところ、約80%の効率でEGFP遺伝子がノックアウトされることを確認できた。
また、若年発症成人型糖尿病4型(MODY4)の原因遺伝子として知られるPdx1をターゲットとしたgRNA(gPdx1)を、AAVベクターを用いた同様の方法でβCas9マウスに導入することとした。
そのマウスでは膵β細胞でのPdx1の発現低下とブドウ糖負荷試験での血糖上昇を認められた。さらにgPdx1が導入された膵β細胞では、本来分泌されるインスリンの発現が低下し、膵α細胞から特異的に分泌されるグルカゴンの発現が増加していることが確認され、膵β細胞の分化転換が生じていると考えられた。
研究グループは「研究で確立した技術は、糖尿病の病態解明や新規創薬をさらに加速させるツールとして今後の応用が期待される」とコメントしている。