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「小児もやもや病」の間接血行再建術と脳室吻合チャネルの関係 東京医科歯科大の研究Gが世界初調査

東京医科歯科大学の原祥子助教らの研究グループは22日、脳血管障害「小児もやもや病」において、間接血行再建術が脳出血の危険が高い血管(脳室吻合チャネル)を退縮させ、将来の脳出血の危険を下げる可能性を示した。同病における間接血行再建術と脳室吻合チャネルの関係を調査したものは存在せず、この研究が世界初の報告となる。

研究グループは、2011年8月~21年12月までに間接血行再建術を受けた小児もやもや病患者(18歳以下)58例を対象に、もやもや血管、脳室吻合チャネル、脳血流の変化を、磁気共鳴画像(MRI)で調査した。患者によって両側の大脳半球を手術する人と片側のみ手術する人がいるが、一度の手術で両側を手術した場合は左右の脳をそれぞれ対象とし、手術前と手術1年後の合計89の大脳半球を調べた。

脳室吻合チャネルに関して詳細に調査すると、手術効果が良好であれば、最も出血の危険が高いとされる「脈絡叢動脈」から発生した脳室吻合チャネルが有意に退縮することが分かった。

脳室吻合チャネルが全くない状態、わずかに存在する状態、太く発達した状態の分布をみると、手術前と比べ手術後で明らかに脳室吻合チャネルは少なくなっている。一方、手術効果が不良である場合、脳室吻合チャネルは減少せず、視床動脈やレンズ核線条体動脈による脳室吻合チャネルは増える傾向にあった。

続いて、手術効果がどのような症例で良好であったかを研究。すると、手術前脳血流量が少ないほうが、手術効果は良好であった。

最後に、脳室吻合チャネルの退縮と関連する因子を追究。統計学的な有意差がみられた因子はなかったものの、脳室吻合チャネルが術後に増生した患者は退縮した患者より年齢がより若い傾向にあると分かった。RNF213p.R4810K変異を有する患者も脳室吻合チャネルが術後に退縮する傾向があると判明した。

研究グループは「脳室吻合チャネルの退縮と成人後の脳出血の関連はまだ調査できていません。本研究グループはこれからも、小児もやもや病患者さんが脳出血を起こすことなく長い人生を過ごしていけるよう、研究を続けていく」と話した。