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東工大の研究G トポロジカル絶縁体を触媒として有機尿素類を室温で高収率合成

東京工業大学の細野秀雄栄誉教授らの研究は22日、表面のみ電気を通す物質「トポロジカル絶縁体」であるBi2Se3を触媒として用いることで、一酸化炭素と酸素と有機アミンからアンモニアなどから合成される「有機尿素」類を室温で高い収率で合成することに成功したと発表した。トロポジカル絶縁体は、物質の内部は絶縁体でありながら、表面は電気を通すという物質。

研究グループは、トポロジカル物質のユニークな物性である表面が極めて丈夫であることと、その起源となっている構成金属元素の大きなスピン軌道相互作用に注目。

トポロジカル絶縁体としてよく知られている Bi2Se3を選択し、そのナノ粒子を作製して、有機尿素類の合成反応の触媒として検討。その結果、室温でほぼ100%という高い収率で、有機尿素類が得られることを見出した。

酸素分子による酸化を伴う反応であるにもかかわらず、ナノ粒子の表面は安定で反応を繰り返し行っても活性の低下は認められなかった。表面の丈夫さはトポロジカル物質の特性によるものだと考えられる。

その反応メカニズムを検討したところ、Bi(ビスマス)とSe(セレン)の両方の元素が表面を構成する(015)面で反応が進行し、酸素分子がBiと結合して、酸化力の強い一重項状態が安定化されて、酸素原子に速やかに解離し、生成した原子状酸素がSeに結合したアミン分子から水素を引き抜き、生じたイミン中間体と一酸化炭素との反応を促進することが分かった。

Biのスピン軌道相互作用を考慮しない計算では、酸素分子は通常の三重項状態のままで、酸素分子の解離は生じていない。スピン軌道相互作用によって生じた局所的な磁場で酸素分子のスピン状態の変化が生じることが、反応のエネルギー障壁を大きく下げたと理解できる。

研究グループは「量子物質の化学反応での応用、特に生物の生存に不可欠な窒素化合物のグリーン合成を目指したものである。量子物質はエレクトロニクスへの応用に向けた研究が進んでいるが、化学反応への展開もこれから期待される」としている。