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表面と裏面で異なる原子を持つ「ヤヌス型」 東北大名誉教授が2次元物質の第2調波増強を検証

■米国化学誌の表紙に□

東北大学の齋藤理一郎名誉教授は22日、米国ライス大学とマサチューセッツ工科大学と共同で、ヤヌス型遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)と呼ばれる表面と裏面で別の原子層を持つ2次元物質が、波長400ナノメートルのSHGを発生することを第一原理計算で検証した。この研究成果は国内だけでなく海外からも注目を集めており、米国化学会「ACS Nano」誌の表紙に採用された。

研究チームは、積層秩序と歪み工学を利用することにより、2次元材料のSHGを改善する新しいメカニズムを第一原理計算で実証し、反転対称性を持たない2次元物質の最適な積層方法を見出した。

計算では、AA積層(最大非線形感受率χ(2)=550pm/V)は、AB積層(最大χ(2)=170pm/V)の3倍大きくなる。これは、AA積層では反転対称性が無いためだ。この結果は実験的に定量的に再現でき、計算結果の信頼性を示す。

さらに非線形な応答を増強させるために、物質を20%歪ませることを計算機上で仮想的に行い、SHGが非常に大きな値になることを見出した。一般に2次元の固体の結晶を20%歪ませることは不可能だが、2次元物質の場合には面に垂直な方向の結合がないために、ストッキングのように面内方向の歪も20%程度歪ませることは可能だ。

研究チームは「今後、歪2次元ヤヌス型遷移金属ダイカルコゲナイド物質を用いたSHGの実用化が期待される」としている。