北陸先端科学技術大学院大学の桶葭興資准教授らの研究グループは22日、高分子や生体物質などのソフトマテリアルに現れる散逸構造「界面分割現象」において、空間有限性の重要性を発表した。生命にある熱力学的に平衡でない状態にある開放系構造「散逸構造」の解明が期待される。界面分割現象は水の蒸発界面で起こる散逸構造。
研究では、粘性流体の実モデルとして植物に含まれる「高分子多糖ペクチン」の微粒子水分散系を用いて流れの状態を理解するために、その無次元数「レイノルズ数」を検証。さらに、流体力学的アプローチのみならず、統計確率や時空間解析から分析を進めると、粘性流体の界面は、空間の有限性を自ら認識して核の数を決めていることが明らかとなった。
水の蒸発界面直下では微粒子がクラスター化し、界面における物質密度が増加すると、その核前駆体の位置が時間をかけてパターン形成位置を決定される。これは、水の蒸発と微粒子析出が両立した非平衡開放系として合理的だ。
実際、DRYでWETな非平衡環境が整った系であり、レイノルズ数が著しく小さくなった10-6以下の、流体の粘りが極めて強い状況で分割現象が起こった。複数の核が形成する際は非同期であったことからも、界面が両端の境界を認識しながら蒸発界面を拡げるようにして再配置したと考えられるとしている。
研究グループは「この界面分割現象の理解は、流体力学、マイクロ流体力学、コロイド科学などさまざまな分野のみならず、生命にある散逸構造の解明に極めて有用」としている。