北海道大学の安藤靖浩准教授らの研究グループは21日、温暖化の影響が最も顕著に見られる、太平洋側北極海の動物プランクトン相に最優占する大型カイアシ類カラヌス・グラシアリスが、地理的な環境変化に応じて、体長、個体群構造、成長速度などを変化させていることを明らかにした。この知見は水産資源の持続的利用につながる可能性もある。
太平洋側北極海の各定点にて、プランクトンネットを海底直上もしくは150メートルから鉛直曳きし、動物プランクトンの試料を採取。それは戦場で分割し、カラヌス・グラシアリスの個体群構造解析と体長解析用資料はホルマリン固定した。
残りの生鮮試料は船上でソートして摂餌強度の指標となる消化管色素量を蛍光光度計により測定。餌生物における分類群評価用の脂肪酸分析用試料を凍結して持ち帰った。陸上実験室では、実体顕微鏡下にてカラヌス・グラシアリスを発育段階ごとに計数して体調測定を行った。
カラヌス・グラシアリスの個体群構造は地理的に大きく異なり、何尾陸棚域で成長が早く、北部の海盆域で成長が遅いことが分かった。海盆では若い個体が、過去の報告よりも多く出現しており、再生産が夏まで長期化していることが示唆されている。
また脂肪酸組成では、北部陸棚域の個体は渦鞭毛藻類由来のDHAを多く含むことが判明した。これは本種が海域により食性を柔軟に変えていることを示している。分布域が拡大化管色素量により評価される摂餌活性は体調が小型な個体にて大型よりも高く、近づく冬に向けてその活性を体調に応じて柔軟に解釈することができる。
研究グループは「海洋生物の生態や生活史の理解が進むことで、気候変動による海洋生態系への影響がより正しく理解され、将来にわたる海洋生態系の維持や水産資源の持続的利用につながることが期待される」と述べている。