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寄生バチ 対象外生物でも成長可 「海賊的寄生」を発見 筑波大

筑波大学

筑波大学の藏滿司夢(くらみつ・かずむ)助教は11日、生物に寄生し宿主を食べて成長する寄生バチが対象でない昆虫に卵を産み付けた場合に、可能とする別種が同時に産卵すれば排除されないと発見した。「海賊的寄生」と名付けている。

寄生バチは100万~200万種の存在が推定される。寄生先はハチごとに異なり、正しければ相手の免疫を制御できるが、間違えれば卵が取り除かれる。先行研究により寄生の対象とする寄生バチとそうでないハチが同時に存在すれば、両種が体内に生息できるという仮説が立てられていた。

藏滿助教は寄生バチで生息地域が重なる「カリヤコマユバチ」と「ギンケハラボソコマユバチ」、ギンケハラが対象とするガの「クサシロキヨトウ」幼虫を用いて実験。両種は同じ地域に生息するガ「アワヨトウ」幼虫で成育できるが、クサシロに卵が産み付けられるケースも確認されていた。

研究の結果、カリヤコマユが2種に同程度産卵したと確認。奇主でないクサシロからカリヤコマユがでてくることはなかった。続けて、仮説を検証すると、それぞれが体内に卵を産んだ場合、最大20パーセントの割合で脱出してきたという。これは仮説を支持し、奇主が不在となっても別の種の寄生バチが繁殖できる環境は残されることを意味する。

藏滿助教は「今後、海賊的寄生やその生理メカニズムを明らかにし、生態系のさらなる理解を進める」と説明。寄生バチは畑の害虫駆除にも役立っており、害虫管理技術の発展にも貢献すると評価している。