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無意識な記憶変化、勘違いは1日後に増 理化学研究所

理化学研究所

理化学研究所の柴田和久チームリーダーらの研究グループは、無意識の記憶である勘違いは時間の変化とともに増えてその発生に海馬が関係していると発見した。逆の過程では推論の成立しない「後件肯定の誤謬(ごびゅう)」が現実では事実と異なる記憶により発生する可能性を指摘し、記憶が原因で生じる誤認や勘違いを防ぐ支援システムの開発にも貢献できるとしている。

研究グループは18~34歳の186人を対象に、後件肯定の誤謬を題材とした研究を実施。参加者はリンゴ、バナナ、オレンジの順で繰り返し見て記憶した後、実際と逆の連続を「見た」と思うかを直後と24時間後に尋ねた。

その結果、実際の連続と逆の順序の果物を見たと答える割合は直後と1日後で同程度であり、正しく答えられる人数が24時間後には減っていたと確認された。

人の脳活動を確認するfMRIを用いて実際の順番とその逆を見ている時の脳活動を測定。記憶をつかさどる海馬は直後では、記憶の統合に関与する右側が強かった。だが24時間後には、正確な順序とその反対で活動の大きさは、記憶の想起に関係する左側と右側で差がなくなっていた。

先行研究では後件肯定の誤謬は論理的思考の間違いで生じると考えられていた。しかし、今回の実験により異なる記憶が原因でも起こりえることを示唆されたという。グループは「記憶が要因で判断ミスを引き起こす場面での支援システムの開発に貢献できる」と説明している。

■後件肯定の誤謬

正しく思われても論理的に妥当でない推論形式。例えば、「誰かが大学教授ならば、その人は勉強が得意だ。私は勉強が得意だ。従って、私は大学教授だ」という文章では、私は勉強が得意であっても、実際に大学教授であるとは限らない。こうした必ずしもそうとは言い切れない推論を指す。