名古屋大学の中澤知洋准教授らが参加する天文衛星「XRISM」(クリズム)の国際共同研究グループは、地球から約1.5億光年離れたケンタウルス座銀河団の中心に高温ガスの流れが存在することを世界で初めて発見した。12日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載されている。
銀河団には暗黒物質(ダークマター)と呼ばれる謎に包まれた物質が存在する。強力な重力で大量の高温ガスを引き寄せるため、X線観測で銀河団内部の様子を知ることができる。X線を放出する天体は強く冷却されるが、ケンタウルス座銀河団は高温に保ち続けられているという謎があった。
グループは23年12~24年1月にかけて、XRISMに搭載された高精度な望遠鏡「Resolve」(リソルブ)を使って観測した。その結果、銀河団の高温ガスがかき混ぜられることによって、中心部に熱が供給され続けて高温状態が維持されていると明らかになったという。
このガスの動きは銀河団同士の衝突や合体によって引き起こされたものであると推測されている。
中澤准教授は「今後もXRISMによる測定によって、新しいデータが提供される」とコメント。「銀河団のみならず宇宙全体の大規模構造の形成や進化に関する研究に対しても理解が深まる」と期待を寄せている。