東京医科歯科大学の木相田潤教授らの研究グループは20日、東北大学などの研究者と共同し、健康の多面的な要素について一度に分析する「アウトカムワイド・アプローチ」を用いて、2013年の口腔の健康と19年の35の健康やウェルビーイングの指標との関連を同時に網羅的に検証したと発表した。口腔の健康状況と死亡が最も頑健な関連性を示すことを解明。歯の喪失を予防する、また、歯を失ってしまった場合には、歯科補綴治療で回復することにより、死亡率や機能障害の減少、知的能力の維持、外出頻度、食生活の改善と関連する可能性があることが示唆された。
研究では、10、13、19年の日本老年学的評価研究の1万5905人のデータおよび日本老年学的評価研究と紐づけた3万2827人の19年の介護保険データを使用。口腔の健康状態は「20歯以上」「10~19歯で歯科ほてつあり」「0~9歯で歯科ほてつあり」「10~19歯で歯科ほてつなし」「0~9歯で歯科ほてつなし」の5つに分類した。
13年の口腔の健康状態と19年の身体・認知・精神的健康、利他的行動などを含む35の健康とウェルビーイング指標との関連を検証した。
その結果、歯が20本未満の人は、外出の頻度が少なく、野菜や果物を食べる量が少ない傾向にあった。また、残存歯が0~9本で歯科ほてつを使用していない人は、重度の身体的な機能障害を有する可能性が高く、知的活動が少なく、絶望感を感じる割合が高いと明らかになった。
研究グループは「口腔の健康増進は、死亡率、身体的機能障害リスクの低減、知的能力の維持などに寄与する可能性があることが分かった。歯の喪失を予防し、また失ってしまった場合には歯科補綴治療でこれを回復することで、それらを改善する可能性がある」としている。
※ほてつ:歯や顎(あご)が欠けたり失われた場合に,冠,クラウン,入れ歯(義歯)やインプラントなどの人工物で補うこと