東京都医学総合研究所の山口智史研究員らは20日、大規模な追跡調査のデータを解析し、思春期の子どもでは「心が不調になると相談したい気持ちが弱くなること」を世界で初めて発見した。これは、大人が子どもと積極的に意思疎通することで、子どもの不調に気づき、子どもも相談したくなるような信頼関係を築いておくことの大切さを示している。子どもが本当に困ったときに、〝困ったら相談しましょう〟というメッセージの有効性を調べたもの。
「うつ症状で本当に困ったときに、子どもは相談ができるのか」―。うつ症状と相談したい気持ちは関連することが分かっているが、症状の悪化が原因で相談したい気持ちが弱くなるということは明らかにされていなかった。そこで追跡調査によって、症状の悪化と相談したい気持ちの相関を調べた。
研究では、思春期の子どもの症状と相談したい気持ちを、2年おきに4回調査(10歳、12歳、14歳、16歳)した。このデータを統計学的手法で解析した結果、全ての調査時期の間(10歳→12歳、12歳→14歳、14歳→16歳)で、「うつ症状が悪化すると、相談したい気持ちが弱くなること」を初めて明らかにした。
研究結果を受けて、研究チームは「まず周囲の大人が普段から子どもと積極的にコミュニケーションをとることで、大人が『自然と』子どもの不調に気づき、子どもも『自然と』大人に相談したくなるような信頼関係を築いておくことがとても重要」と指摘している。