東京大学の佐藤佳教授が主宰する研究チームは19日、流行の拡大が指摘されている新型コロナウイルス「オミクロンBA.2.86株」の流行動態や免疫抵抗性などの特徴を発表した。1人の感染者が生み出す感染者数は現在の流行株「XBB.1.5株」よりも1.3倍ほど高いことなどが分かった。有効な感染対策を講じる必要性を呼びかけている。
BA.2.86株は昨年流行した「BA.2株」と比べて、スパイクタンパク質に30カ所以上の違いがある。その変異の多さからWHOは先月、流行拡大の可能性が懸念される「監視下の変異株」に指定した。
研究ではまず、人の集団内におけるBA.2.86株について1人の患者が生み出す感染者の数を確認した。その結果、XBB.1.5株に比べて1.3倍大きく、現在置き換わりが進んでいる「EG.5.1株」と同程度に高いことが分かった。
続いてBA.2.86株のウイルスの感染を防ぐための中和抗体の中和活性について検証した。BA.2.86株はワクチン接種によって誘導される中和抗体に対して極めて強い抵抗性を示し、これはEG.5.1株と同程度だと判明している。
またXBB株のブレイクスルー感染によって誘導される中和抗体の中和活性についても確かめた。それにより、BA.2.86株はEG.5.1以上に中和されにくいことが明らかになった。
研究グループは「オミクロンBA.2.86株は、今後全世界に拡大していく可能性が懸念されており、さらに現在の中和抗体による感染防御の有効性も低いことが予想されるため、有効な感染対策を講じることが肝要だ」と警鐘を鳴らしている。