アリヅカコオロギの逃避戦略図=プレスリリースより
名古屋大学の田中良弥助教らと名古屋市立大学のグループは14日、アリの巣で暮らす「アリヅカコオロギ」の特異な逃避戦略を発見した。アリの背後に移動することで攻撃されるリスクを下げつつ、効率的に食料を探索しているという。
アリヅカコオロギは体長3ミリ程度で、アリの幼虫や虫の死がいを食べる。巣の中に生息するが、アリの匂いをまとい擬態することが苦手であるとされている。そのため、どのように危険を避けているのかは知られていなかった。
研究の結果、ゆっくりと弧を描いて視覚から外れる「ドッジング」と素早く直線的に逃げる「ディスタンシング」が行われていると確認された。アリとの距離が離れている場合にはドッジングし、近ければディスタンシングで逃げているという。
さらに、グループは宿主である「トビイロシワアリ」に加えて、その他の2種「オオズアリ」と「オオハリアリ」に対する逃避行動の頻度を調べた。すると、トビイロシワアリにドッジングを使う回数が多かった。位置が大きく変わらないため、狭い空間で効果的にエサを探す効果があるという。
田中助教は「今回の研究を通して、一言で天敵から逃げると言っても、よく観察すると様々な戦略があることを実感した」と説明。「寄生関係のある種間などでは、私たちが想像している以上の行動戦略がまだ隠されているのかも知れない。今後も、行動解析を軸に遺伝子や脳の働きを含めて行動の不思議に迫る研究に取り組みたい」としている。