九州大学の平松千尋准教授らの研究グループは、2色覚や3色覚など異なる色覚を持つ人々を対象として、多様な色や明るさの空間分布を示す絵画画像を見ている際の視線を計測し、絵画の印象を様々な形容詞を用いて評価してもらう実験をした。研究では色彩印象は生まれつきの色覚に大きく影響されないことを明らかにした。
研究では、2色覚や3色覚など異なる色覚を持つ58人が、色と明るさの空間配置が様々な 24枚の絵画画像を30秒間鑑賞する際の視線を計測した。一般的な3色覚を持つ人の半数は2色覚の見え方を模擬した画像を鑑賞。また、23の形容詞対を用いて各絵画に対する印象を評価してもらった。
その結果、個人の視線の相関解析により、3色覚同士の視線は2色覚同士より似ていることが判明。また、3色覚の人が2色覚の見え方を模擬した画像を見た時の印象の方が、生まれつき2色覚の人が持つ印象よりも、3色覚の人の印象と異なると分かった。
研究グループは「主観的な色彩印象の形成には、遺伝子に規定された色覚のみに影響されず、脳における情報処理過程が大きく関わっていると考えられる。網膜で捉えられた光情報を用いて、どのような脳での情報処理により印象が形成されるのか今後研究が深化することが望まれる」としている。