東京大学の小池和彦名誉教授らの研究グループは、ラジオ波焼灼術(RFA)による根治術後の肝ガンの予後予測モデルを、グーグルによって開発されたAIモデル「Transformer」を用いて開発し、Transformerの予測が従来の深層学習(ディープラーニング)をベースにしたものよりも高精度であることを世界で初めて示した。
RFAは、肝ガンに対する有用な根治術として、広く医療現場で採用されている。だが、肝ガンは再発率が高く、予後の悪い肝ガンも存在する。RFA治療後の肝ガンの予後を知ることは、最適な治療計画の決定にも重要だ。
研究グループは、機械学習モデルを作成するために、RFA治療時点における16個の変数を抽出した。
訓練データと検証データを合わせた計1600人の患者データを用いて、治療後の経過を推定するための機械学習モデルを、Transformerと従来の深層学習の2種類のアルゴリズムを用いて作成し、独立したテストデータ178人の患者情報を用いてモデル精度の評価を行った。
すると、テストデータを使用した精度評価において、Transformerを基にした機械学習モデルがより高い精度を示した。
Transformerモデルを用いることで、治療後経過の予測の出力を個々の患者に対して行うことが可能となる。Transformerモデルに基づく予測を用いることで、患者ごとの疾患リスクに応じたインフォームド・コンセントを含む診療の個別最適化が期待されている。